歯周組織再生治療 左下6

今回の症例は、右下6番です、冷水痛があり、分岐部からの排膿もありました。ポケットも10mm以上あり、近心根の根尖付近まで骨吸収が進んでいました(赤線で囲った部分)。CT画像をみても結構厳しいです。近心根のみの抜根という手段もあるかもしれませんが、根がきちんと2分割できるかかなり疑問な形態なので、今回は無理です。で、今回の治療方針を考えると選択肢としては、以下の4つが考えられます。術前847436DB0703240036_141115104045

  1. ブリッジ:両側の健全歯を削合しないといけない。削合していいなら、経済的な部分も考えると現実的な選択肢
  2. 入れ歯:一歯のみの入れ歯は患者さんにつかっていただけないかもしれない。:あまり現実的でない選択肢
  3. インプラント:赤線の部分の骨を戻す(GBR)が必要。経済的な負担は大きけれども理想的な選択肢
  4. 歯周組織再生治療:隣在歯の削合もなく、抜歯の必要もないので成功するなら理想的な選択肢

今回は4の歯周組織再生療法を行うこととしました。できれば抜歯をしたくないというのが理由です。術式としてはフラップをオープンして顕微鏡下でのEr:YAGレーザーでの歯石除去と根面処理を行いました。一年後の写真です。もちろん排膿も止まり近心の骨の再生も認められます。歯根膜腔も認められるようになりました。エムドゲインなどの材料が使用できればもっといい結果が得られると思いますが、これでも十分ではないかと思っています。

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歯周組織再生治療 右上4

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術前
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術前

 

術前の写真です、黄色の線は歯石のついてるところです。赤のところは根尖病巣があります。青い線は骨吸収が認められました。もちろん動揺もあり、頬側のポケットからの排膿もありました。患者さんから、歯肉が腫脹しているとの訴えもありました。この時点で抜歯と判断しても良いかもしれません。

抜歯となれば、

  1. 両側の歯を削ってブリッジ
  2. 入れ歯
  3. インプラント

の3つの選択肢があると思います。しかし、インプラントは患者さんが経済的負担ができないということで断念(まあ、あまりオススメもしてません)。入れ歯はもとよりダメと、ブリッジについても5番に自費のクラウンが入っていること、3番が生活歯で綺麗な歯なのであまり削りたくありません。つまり、抜歯してしまうとその後の治療の選択はどれも受け入れがたいものでした。(保険治療に元々そのような考えはそぐわない気もします)

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術直後

で、なんとか抜歯を行わない方法を考えてみるということで、歯周再生治療を試みるということです。

まずは、カリエスもありますし、根尖に病巣もあるので、根管治療を行いました。遠心部分もスケーリングを行いましたが、ここは歯周組織の再生を狙い、顕微鏡下でのEr:YAGレーザーを用いてスケーリングを行いました。この症例ではフラップレスで行いました。フラップレスとはメスを用いて歯肉を剥離せずに行うことです。術直後のX線(左)では、やはり、きびし〜〜〜という感じです。この後、クラウンを入れて様子を見ました。

術後1年です、なんとか安定してきました。遠心部分の骨も安定し、やや再生してきたような気がします。けど、7番は抜歯となりました、、、

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術後:45間に注目
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術後

 

 

 

Er:YAGレーザーによる歯石除去

Er:YAGレーザーによる歯石取り(練習)動画です。

今までの、スケーラーとか超音波チップによる接触型(いわゆる ひっかく)と違い、非接触で歯石が取れて行きます。この非接触で取っていくため、歯に負担をかけない、スメアー層ができない、など様々なメリットが生まれます。特に再生治療には威力を発揮します。

Er:YAGレーザーの基礎と臨床

歯周治療・インプラント治療におけるEr:YAGレーザーの使い方

Er: Yag Laser-Is It Effective for Treatment of Chronic Periodontitis?